太陽に恋をして
朝にははらはらと降っていた雪が、夕方には吹雪になって10センチほど積もっていた。

従業員出入口で思わず立ち止まっていると、

「電車も運休してるみたいだよ」

詰所の警備員さんが教えてくれた。

「珍しいですね。こんな雪が積もるなんて」

「都心では13年ぶりだって言ってたよ」

警備員さんの言葉に頷きながら、どうやって帰ろうか考えていると、

「楓佳ちゃん?」

後ろから聞き覚えのある声がして柳原さんが走ってきた。


「すごい雪」


柳原さんも仕事終わりで知らなかったのか、外の景色を見て目を丸くしている。

「電車もとまってるらしいです」


「てことはタクシーも行列だろうな…」

私と柳原さんはしばらく黙って雪が降り積もる様子を見ていた。


「楓佳ちゃん」


「なんですか?」


「熱帯魚は好き?」

私は思わず、隣の柳原さんを見上げる。


「熱帯魚…ですか?」


柳原さんは雪から私に目を移すと、


「熱帯魚を見ながら、酒が飲めるバーがあるんだけど、良かったらこれからどうかな?」

そう言って、どうせ電車が動くまでは帰れないしね、と笑う。


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