太陽に恋をして
柳原さんはそう言うとまた私の目をじっと見つめた。


水槽からの光で、柳原さんの瞳の色がよく見えた。


柳原さんは、吸い込まれそうなくらいきれいな薄茶色の瞳をしている。


じっと見ていると、瞳の中にひまわりのような模様が見えた。


「…なに?」


「目の中に模様が」


柳原さんの瞳に咲いたひまわりを見つめたまま、私が言うと、柳原さんは少し恥ずかしそうに笑って、


「あー、これ?なんかあるでしょ」


自分の目を指差す。


「瞳孔の周りの虹彩(こうさい)って言うんだけどね。これ、指紋と一緒で一人一人模様が違うらしいよ」


へぇ、と言いながらも、私はそのきれいな瞳から目をそらせないでいた。


「スパイ映画とかで見たことない?虹彩認証っていって、セキュリティシステムをのぞいて生体認証するやつ」


柳原さんはそう言いながら、見えやすいように少し目を大きく見開いてくれた。


見れば見るほど美しい、今まで見たことがないような瞳だった。

こんなきれいな瞳を、唯月にも見せたいなと思う。



「ずっと見つめられるとなんか照れるんだけど…」


「あっ、すみません」


身を乗り出して柳原さんの瞳を見ていたことに気づき、急に恥ずかしくなる。


いやだな、なんか子どもっぽい、私。


そう思いながら、目の前のスモークサーモンのマリネをフォークでつつく。


雪はやんだだろうか。
電車はもう走っているだろうか。





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