太陽に恋をして
化粧室に行って戻ってくると、携帯を見ていた柳原さんが顔をあげた。


「電車、運転再開してるって」


「良かった。これで帰れますね」


ソファに座りながらほっとしてそう言うと、

「俺的には、このまま止まってくれてても良かったんだけどね」


呟くように、柳原さんが言った。


どう返していいかわからなくて、思わずうつむいてしまう。

顔がかぁっと赤くなるのが自分でもわかって、こんなことで赤くなるなんてやっぱり子どもみたいだと恥ずかしくなる。

「帰ろっか」


柳原さんはそんな私に気付かないふりをして立ち上がった。


お店の外に出ると、雪はやんでいて、駅の方をみると電車が走っているのが見える。


「携帯、鳴ってない?」


柳原さんに言われて、バッグをのぞくと確かに私の携帯が光っている。

出る前に切れてしまった携帯の液晶画面には、唯月からの着信がいくつが残っていた。


「すみません、ちょっと電話してきます」


柳原さんから少し離れて、唯月にコールバックすると、ワンコールもしないうちに唯月がでた。


『ふうちゃん?今どこ?』


「今?駅の近く」


『迎えに行くからそこで待ってて』


「え?電車もう動いてるし大丈夫だよ」


『電車、すげー混んでるよ。俺、車で行くから。駅のどこ?』


今いる場所を簡単に説明すると、唯月はすぐ行く、と言って電話を切った。



「すみません、幼馴染みが迎えに来てくれるみたいなんで、私はここで」


柳原さんのもとに戻り、そう言うと、柳原さんはそっか、と笑う。


「俺はここからすぐのとこだから。幼馴染みが来るまで一緒に待ってるよ」


柳原さんは電車が止まってても帰れるとこに住んでるのに、私が帰れないから一緒にいてくれたのか。

なんだか悪いなと思いながら、背の高い柳原さんの隣で唯月が来るのを待った。

唯月が来たら、柳原さんの瞳の中のひまわりを見せてもらって、帰ったら唯月の瞳の中の模様も見てみよう。


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