太陽に恋をして
「私たちスキー合宿に行けなかったから、雪さわるのなんて久しぶりだね」


楓佳は気持ちを切り替えるように、明るい声を出した。


「二人ともインフルエンザだったもんな」


俺もわざと明るく答える。


楓佳はしゃがみこんで雪をすくうと、行きたかったなと呟いた。


俺は違う。
楓佳が行けないのなら、自分も行きたくなかった。
雪国だろうが南の島だろうが、楓佳がいないのなら、どこにも行きたくなかった。


「あの時のインフルエンザはきつかったね」


楓佳は思い出したように、ふふっと笑って、


「私、あの時高熱で変な夢見ちゃったよ」



立ち上がってスカートのすそをはらう。


「どんな夢?」


「それは言わない」


楓佳は冷たくなった指先を俺のコートのポケットにするり、と入れて温めながら、そろそろ帰ろうか、と笑った。



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