太陽に恋をして
加奈さんはソファにもたれると、うふふと笑ってお腹をさする。


「あー、よくうごくわ。この子も甘いものが好きみたいね」

それから、私を優しい目で見て、


「楓佳ちゃんは、おじいちゃんになった柳原さんを想像できる?」

と聞いた。


私は、目を伏せて想像してみる。
柳原さんといる未来。
それはなんだかぼやけてはっきりと見えなかった。


「おじいちゃんのゆづくんならできる?」


それなら出来る。
想像というよりもっと現実的に。
きっと今みたいに、いや今よりもっと寝起きが悪くなってて、眠くなったらどこでも寝ちゃって、もっとしょうがないおじいちゃんになる。


「人間が想像できることは、人間が実現できることらしいよ」

加奈さんはふいにそんなことを言い、これ言ったの誰だったかなと笑う。


「うまく言えないんだけど、一緒にいて楽しい人が一番楽なのよ。楽しいと楽、字も一緒でしょ」


加奈さんがテーブルに指で書いた『楽』という文字を見ながら、ぼんやりと唯月のことを考えた。


大人になったから、私たちは一緒にいられなくなったのかな。
それなら、私は子どものままでいいや。


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