太陽に恋をして

〜side 唯月〜

壁時計の秒針の音がやけに耳に響いた。

灯りを最小限まで落とした閉店後の店内で、俺は店長と沙耶さんと向かい合っていた。


閉店後の店内は、開店前とも営業中とも違う匂いがする。
一日の終わり、今日の思い出の匂いがする。



「そうか…。まぁ唯月が決めたんなら仕方ないけど」


店長は、そうかともう一度呟き、頭をかいた。


「…俺的にはお前はこっちに残って欲しかったんだけどな」

すみません、と頭を下げると、店長はいやいいんだ、と手を振る。


「お前のことだから、向こうでも戦力になるだろう。予定を少し早めてあっちに行く前に社内テストしよう。スタイリストとして行く方がいいだろ?」


店長の言葉に顔を上げると、店長は顎を撫でながらため息をついた。


「どうしても行くのか?大阪」


「…いい勉強になると思うので」


店長は、まぁなと呟き二、三回大きく頷いた。


「これだけは言っとく。いつでも戻ってこい。大阪の水はお前には合わんかもしれん。腹を下すかもしれん。そしたらすぐにこっちに戻ってこいよ」


はい、と言いながら、俺は少し笑う。
この人の元で働けて本当に良かったと思いながら。



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