太陽に恋をして
楓佳からはあの日以来連絡はなかった。

楓佳があの男と行ったイルミネーションに、本当は俺が連れていきたかった。
楓佳がイルミネーションを好きなのを知っていたから。

方向音痴な楓佳はきっと一人では行けないし、あんなカップルだらけの場所に一人で行く勇気もないだろうから、サプライズで最終日に誘うつもりだった。

ご飯でも食べにいこうなんて誘って、イルミネーションに連れていったらどんな顔をするだろう、なんて一人で勝手に想像して、それなのに他の男と行ったからって楓佳に冷たくするなんて、俺はどれだけ子どもなんだろう。



「子どもじゃないんだから」なんて言ったけど、いつだって子どもみたいに楓佳に甘えていたのは俺の方だったのに。




ため息をついて立ち上がると、パソコンデスクに向かう。
太陽の塔のミニチュアを手に取り、しばらく見ているとやっぱり楓佳に似ていると思う。


こんな変な口はしないけど。

大きくて神々しくて見てると楽しい。


大阪には楓佳はいないけど、太陽の塔がある。
俺はこの太陽の塔が見える場所に暮らそう。
そして、毎日毎日これを見て、楓佳のしあわせを祈ろう。

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