太陽に恋をして
紙袋を抱き締めたまま、私は走り出した。

あと1時間ある。
きっと間に合う。


走りながら携帯を取りだし、唯月に電話をかけた。



『…もしもし?』

「ゆづっ!」

『ふぅちゃん…?」

「そこにいて!絶対よ!絶対そこにいてよ」

『…』

「待ってて!!」



それだけ言うと、あとはひたすら走った。
電車に飛び乗り、早く早くと祈る。


唯月が大阪に?
そんなの無理に決まってる。


唯月は頼りないから、一人じゃ絶対無理に決まってる。



私がいない大阪で、唯月が一人で暮らすなんて、無理に決まってるよ。


それなのにどうして?

私を置いて、大阪に行くの?


どうして?

私になにも言わずに行ってしまうの?



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