白衣の変人
目的の場所につくと、真璃は軽めのノックを三回して部屋の中にいるであろうこれからの直属上司に声を掛けた。
「すみません、バイトの件で来ました。汐沢真璃で「入れ。」
全てを言う前に入室許可が下った。その低く落ち着いた声に男性のようだと判断できる。恐る恐るドアを開けて、まず目に入ったものはもの凄い量の分厚い書籍がきっちりと並べられた本棚。作業机らしきものの上には学生のレポートらしき紙の束。その机に向かっているこの部屋唯一の人物はこちらを見ようともしない。
「あの……。」
何も言わないその男に、真璃は小さく声を掛けた。男はやはりこちらを見ることはせず、黙って部屋の中央にある黒い革張りのソファを指差した。その態度に少々怒りを覚えたものの、真璃は黙って指示通りソファに腰掛けた。ソファ前のテーブルにも小難しい事が書かれている紙の束が大量に置かれており、人を呼ぶ部屋ではないと心底思う。
十分程経った頃だろうか。静かな部屋に鳴り響いていたペンの音が止み、人が動く気配がした。動いたのは勿論真璃ではない。向かい合うようにソファに座った男は絵に描いたような研究者だった。漫画の中にしか登場しないようなぐるぐる眼鏡。風邪を引いているのか顔を隠したいのか着用しているマスク。どのくらい伸ばしっぱなしにしたのかボサボサの真っ黒な髪の毛。グレーのYシャツに濃紺のネクタイをきっちりと締め、黒のスラックスを穿いている。その上にはこれまた定番のたなびく白衣が……。
「すみません、バイトの件で来ました。汐沢真璃で「入れ。」
全てを言う前に入室許可が下った。その低く落ち着いた声に男性のようだと判断できる。恐る恐るドアを開けて、まず目に入ったものはもの凄い量の分厚い書籍がきっちりと並べられた本棚。作業机らしきものの上には学生のレポートらしき紙の束。その机に向かっているこの部屋唯一の人物はこちらを見ようともしない。
「あの……。」
何も言わないその男に、真璃は小さく声を掛けた。男はやはりこちらを見ることはせず、黙って部屋の中央にある黒い革張りのソファを指差した。その態度に少々怒りを覚えたものの、真璃は黙って指示通りソファに腰掛けた。ソファ前のテーブルにも小難しい事が書かれている紙の束が大量に置かれており、人を呼ぶ部屋ではないと心底思う。
十分程経った頃だろうか。静かな部屋に鳴り響いていたペンの音が止み、人が動く気配がした。動いたのは勿論真璃ではない。向かい合うようにソファに座った男は絵に描いたような研究者だった。漫画の中にしか登場しないようなぐるぐる眼鏡。風邪を引いているのか顔を隠したいのか着用しているマスク。どのくらい伸ばしっぱなしにしたのかボサボサの真っ黒な髪の毛。グレーのYシャツに濃紺のネクタイをきっちりと締め、黒のスラックスを穿いている。その上にはこれまた定番のたなびく白衣が……。