白衣の変人
「……これを書け。」


不躾な目線など気にしていないように、男は言った。短く紡がれた言葉は感情がこもっておらず、どこか投げやりというか、適当だった。渡されたボールペンで渡された紙に個人情報を書いていく。そして、入れる曜日や時間帯などを書き、残業の可否などに丸をつけ、目の前の男に渡した。


男は紙を一通り確認し、真璃に視線を投げた。やっと視線が合った気がする。でも、その男の特徴的過ぎるレンズのせいで瞳は見えない。


「えっと……。」


見つめられて何も言われないのは正直気分が悪い。幸いだったのは、その視線が厭らしいものではなく、小学校の虫の観察のようなものだったことだ。それが顔に出ていたのか、男は鼻で笑った。


「無言でジロジロ見られる気分はどうだね、汐沢君?」
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