白衣の変人
その言葉には驚くことしかできない。それでは、この男は先程真璃にやられた仕返しをしただけということだ。


「……良くはないですね。むしろ不快です。」


正直に、でも嫌味も含めて真璃は言った。


「ほう……それは気が合うな。私も“初対面の人間に”、“無遠慮に”、“ジロジロと”見られるのは不愉快極まりない。」


さらり、と流れるように男は嫌味を返してきた。ご丁寧に嫌味の部分を強調している。


「……すみませんでした。」


ここまで言われては謝るしかない。だが、不愉快に思うのならばわざわざやり返す必要などないのではないか、と真璃は不満だ。自分が先にやって悪かったとはいえ、やり返しておまけに嫌味を言うなど大の大人がすることだろうか。


「それは何に対しての謝罪だね?」


これまたネチネチと男は返してきた。眼鏡とマスクで表情は見えないが、恐らく笑っている。素直に許すことはできないのだろうかこの男は。
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