白衣の変人
「先程の不躾な視線に対して、です。」


怒りを表に出すことなどできず、真璃は冷静を繕って言った。


「そうか。それで?君は何か不満があるようだがそれを聞いても?」


男はニヤニヤと効果音がつきそうな笑みを浮かべて(いるように見えた)、真璃に聞いた。


「……“大変失礼ですが”お名前を伺ってもよろしいですか?」


先程の不満をそのままぶつけても無駄だと悟った真璃は別の角度から攻めることにした。まだこの男の名前を聞いてない。あわよくば今この瞬間まで名乗らなかったことをネチネチ言うつもりでいた。


「これは失礼した。私は墨原朱門(すみはらしゅもん)という。」


全く意に介さない様子で、墨原は答えた。恐らく真璃の考えていることなんてお見通しなんだろう。
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