白衣の変人

「以上で不満は解消しましたかな？問題なければ君の今後の仕事内容とシフトの打ち合わせに入りたいのだが。」


墨原はさっさと話題を変えた。真璃も、この少々腹立たしい男と少しでも早く離れたいので、その話に乗ることにする。


「まず、君の仕事内容だが…ま、雑用係と言えば分かるかね。私が講義で使う物の準備、片付けなどが主だが……基本的には私の命令が最優先だ。それだけは覚えておくように。給与は月の最後の出勤後に君に直接払う。ここまでで質問は？」


てきぱきと説明をする姿はやはり人にものを教える“教授”そのものだった。普通の人なら噛むような長台詞も流れるようにその隠されている口から紡がれた。呆けていると、墨原は訝しげにこちらを見た。


「……汐沢君？」


明らかに不機嫌さの滲む声音に、真璃は慌てて返事をした。


「ああ！はい、大丈夫です。」


その真璃の様子を見て、墨原は大げさな溜息をついた。


「最初からこの調子では先が思いやられますな。君には仕事を教えるより先に人の話を良く聞き、答えることを教える方が良さそうだ。」