●飴森くんの王子。
 

 

 
「ほーいみんな席つけやー」

 


グッドタイミング、ちょうど担任の中野先生が教室に入ってきてみんなが慌てて席に着く。
中野先生は童顔だけど怒ると怖いからねー。男だし体育会系だし。

 


「んじゃ体調悪い人いるかー、ま、いないわな。いてもいないわな。いるヤツはつばでもなめとけ」

 


今日も元気にいつも通りテキトーですね。
つばをなめても体調は治りませんよアホですか。


それと先生、今日もご飯粒口元についてますけど。

なんて言おうものならあぁん? って物凄い眼光で睨まれるだけだから、
みんなはただただ沈黙を守っている。もちろんあたしも。


面倒くさいことには近づかず触れず首をツッコまず。これ大事。

 


「……飴森勇、君ってさ」

 


フードマンが前を向いたままで、ぼそりと呟いた。
そのセリフからしてあたしに向けて言っているものだというのは明らかですねはい。

 


「女子にモテてるようだけど、それは“男”として見られているのであって、飴森勇と本当の友達の女子は1人もいないよね」

「――――んなっ!?」

 


思ってもみなかった言葉に、開いた口が塞がらない。
これを言うのは二度目だけどなんだこいつ、なんだこいつなんだこいつ!?

 

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