●飴森くんの王子。
 
 
 
 
「え"っ…………!?」
 
 
 
黒崎くんの思いもしなかった言葉に、裏返った声が出る。
もうちょっと違う答えを期待していた18秒前のあたしを誰か殴ってください。
 
 
え、違う答え? そりゃあもちろんもっと面白い展開になる答えだよ。
 
 
 
 
『フッ、僕らはお互い前世から因縁のあるライバルだったのさ』
 
『そうか。薄々感じていたよこの怨念……ここで会ったが百年目、さぁ剣を抜けぇッ』
 
『望むところだアチョオーウッ』
 
 
 
 
ここから壮絶な闘いが始まり最終的にはあたしが勝って、
そしてそして大勢の女の子に囲まれてキャッキャウフフ……!
 
 
 
 
「よし黒崎くん、いざ勝負といこうか」
 
「え。数十秒間の間にどんな妄想が繰り広げられたの」
 
 
 
 
ちぇ、なんだあたしの妄想ワールドだったのか。
リアルに結末まで妄想して口元緩める前に黒崎くんに止めてほしかったよ。
 
 
 
 
「……冗談はここまでにして」
 
 
 
 
黒崎くんの声のトーンが冬の冷気のようにスッと下がった気がした。
 
 
いや冗談っていつあたしが冗談言ったんだ? あたしはいつも本気だよ。 
あたしはいつも人生全力で生きてる真っ当な人間だよ。
 
 
 
 
「……オレに言うこと、ない?」
 
 
 
 
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