●飴森くんの王子。
◯白の王子の少々焦燥感。
*
「なぁ龍、なんかさっきからお前不機嫌そうだけど……どしたん?」
2時間目の体育も半分が終わり、そろそろ目が覚めてくるという時間帯。
でも今日はどちらかというと朝から目が覚めている方だ。
…………なんか、イライラして。
「別にどうしたもこうしたもねーよ。……なんかイラつくだけだし」
片手で持っていたバレーボールをダンッと床につくと、
隣で俺の様子を窺っていた俊(しゅん)がビクッと肩を震わせた。
「おま……絶対なんかあったろ。ま、どうせ幼馴染み絡みだろーけどさ」
「は? なんでそこでユウになるんだよ」
俺が眉根を寄せると、俊は当然だろと言わんばかりに八重歯を見せて笑った。
こいつの笑顔は人懐っこい子犬を思わせる。
「なんだかんだ言って龍は勇くんラブっしょ? まったくツンツンさんなんだか――いでっ」
「黙れ。俺がいつあんな男おんなにラブなんだよ」
一発頭にげんこつをお見舞いすると、俊は涙目になりながら俺を睨んだ。
悪いな、でもお前の言動が原因だからな。
「事実そうじゃんかー……だからイラついてんだろ、龍は」
「いや違うし」
「まぁたまた、強がっちゃって」
俊は俺を見てケラケラと笑うと、目尻に溜まっていた滴を拭った。
もう一発お見舞いしとこうか――と考えていると。
「きゃぁああ!!」
体育館に、女子の悲鳴にも似た歓声が響き渡った。