●飴森くんの王子。
声が上がったほうに視線を投げると案の定そこには
シュートを決めて滴る汗を拭っているユウがいた。
2時間目の体育は男子はバレー、女子はバスケとなっていた。
普段男子扱いのユウも授業だけはさすがに男子扱いとはいかない。
まぁあいつは運動神経男子並みかそれ以上だから男子の方にいても何の問題もないけど。
「いやー、勇くんの人気力は凄まじいねぇ」
隣でしみじみと呟く俊。
羨ましがるような色は含まれているが嫉妬のようなものは含まれていない。
まぁこいつは彼女持ちだからな。嫉妬したところで何にもならない。
「あいつは女子好きだから、ほっとけばいいんだよ」
「おやぁ龍くん。女子に嫉妬ですかライバルは女子ですか。ほぉ!」
「そろそろ顔面にバレーボール埋めるぞ」
睨みを据えると「あはは冗談だって」と俊はニタニタ顔のまま言った。
そろそろ本気でバレーボールを顔に埋め込むか、と俊に近づこうとすると――
「ほら龍。次お前サーブだって」
それを読んでいたかのように俊が笑みを湛えたまま体を引いた。
チッと舌打ちをしてから、俺は「んじゃ行ってくる」とコートへ向かった。
「あ、白龍王子がサーブ打つみたい」
「ホントだー。頑張れー白龍王子」
「こっち向いてくんないかな?」
隣のコートでバスケの応援をしていた女子の視線が集まるのが分かる。
これだから女子は苦手だ。軽いというか安いというか。
人は見た目よりも性格とか言うくせに所詮顔だ。
というかいい加減その『白龍王子』呼びをやめてもらいたい。
「お、龍じゃん。空振るなよー」
……ただし、女子の中には一部例外もいるということを忘れてはならない。
うちの幼馴染みはその一部の例外に入ることも。
「(……あいつ絶対バカにしてるな)」
そのことにも少しのイラ立ちを覚えながら、
俺はボールを宙に高く抛った。