●飴森くんの王子。
「ま、世間体で言えばそんな関係か。それよりお前、いつの間にユウと仲良くなったんだな」
今朝のSTの時の2人の様子を思い出す。
ユウが一方的に男子に話しかけていたのは珍しい。
うるさかったから中野先生も2人が話していた事に気づいていたはず。
だけど弧影を怒りはしなかったし、2人の会話の邪魔をしようともしなかった。
担任として、不登校ぎみの弧影を心配していたんだろう。
「仲良くはない。……僕に嫉妬?」
「ばっ、ちげーよ!」
なんで俺が弧影に嫉妬しなくちゃならないんだ。
しかもユウのことで? 死んでもありえない。
「白石龍、君は意外に鈍いようだね」
「……は?」
俺が聞き返すと、弧影は答えずに肩を竦めて見せただけだった。
若干呆れたような感じがするのは気のせいだろうか。
「君は女子を選び放題な立場なのに、難解な恋をしているね」
「は?」
「いや、こっちの話」
嘘つけ。“君は”って言ってる時点で俺に向けてるだろ。
意味深なことを言ってないでハッキリ言ったらどうなんだ。
「僕に嫉妬するより、黒崎帝にしなよ」
「…………」
その言葉に、俺は弧影から黒崎へと視線を移した。