●飴森くんの王子。
 


 
机の中に手を突っ込んでごそごそ探り、
入っていた手紙をゆっくり数える。
 
ラブ・レターの定番は大抵下駄箱なんだけど、
女の子たちはどうやら不衛生な下駄箱を避けるらしい。
 
 
 
「んーと、全部で16」
 
「はっ!? じゅうろく!? マジかよ」
 
 
 
お、その反応からして今日はあたしより下か。
へへーん、ざまあみろ! 女に負けるとか屈辱だろ!
 
 
 
 
「ま、いいや。本命からもらえなきゃ意味ないしな」
 
「おーおー負け惜しみですか、えぇ?」
 
「お前ほんっと可愛くねぇ……」
 
 
 
言ってろ言ってろ。あたしは別に可愛くなくていいしね。
女の子と戯れていられるんならそれで幸せなんだよ!
 
 
フン、と顔を背けるとそれまであたしとリューのやり取りを聞いていた
女の子たちの一人がおずおずと会話に入る。
 
 
 
 
「白龍王子……本命って、好きな人いるの?」
 
 
 
その言葉に、リューはまるで呼吸をしているついでのように口を開いた。
 
 
 
「うん。いるよ」
 
 
 
そう言って女の子に爽やかな微笑みを向ける。
コイツ、白龍王子とか言われてるけど中身絶対黒いだろ……!
いやあたしが言える立場じゃないけども。
 
 
 
っていうかリュー、好きな人いたんだ。
当然全然完全的に知らなかったし気づきもしなかったなぁ。
 
まぁ、あたしにはなんの関係もないから別にいいんだけどね。
 
 
それにリューが誰かと付き合ってくれれば、
許婚なんて迷惑な約束も抹消されるだろうしね。
 
 
 
 
「(…………よし、)」
 
 
 
 
一応幼馴染みだもんな。上手くいってもらわないと寝覚めが悪いし。
ここはいっちょ、リューの恋を応援してみますか。
 
 
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