●飴森くんの王子。
◇孤高の王子は飴森くんの隣の席でありぼっちである。
その恐ろしいセリフはすぐ隣――あたしの隣の席から聞こえてきた。
5月に入って席替えをしたけど隣はぽっかり空いている記憶しかなかったから、
人が来ていたことに少なからずの衝撃が。いやホントだよ。
視線を流すと、まず視界に入るのは灰色のパーカーフードですっぽり覆われた頭。
顔は全然見えないけれど身体は細身な方だ。手足も意外に長い。
そして両手に握られている本にはご立派にもブックカバーがされておらず、
本の表紙には『人を5分で呪う方法』などという怪しげな文字が躍っていた。
「(はっ、のろ……!?)」
そして今更ながらギョッと目を見開く。
5分で人を呪うって怖っ!
え、君病んでるの? そういうぶっ飛んでる系の人ですかウワーオ近づきたくねぇ。
「馬鹿にしてればいいよ。いずれ僕に呪われる運命なんだから……」
まるであたしの心を読んで答えたかのような言葉に、
ゾクリと冷たいものが背筋を這ったような感覚を覚える。
な、なんだこのフードマン!?
フードの中からこっちに口元だけ覗かせて放つ言葉がそれかよ!
呪われるとか運命とか、病気か君は。中二病という病気なのか。
なに、今は人を呪う病み系ゲームでも流行ってるの?
流行の最先端って奥深いんだね。縁がないから分からないや。
そんなの一生分かりたくもないや。理解に苦しむね。
というか色々ツッコむ要素ありすぎてなにから指摘すればいいか困っちゃうね!