アナザー・シンデレラ
プロローグ
むかしむかし、あるところに若い夫婦がおりました。



美しい妻と、心優しい夫は周囲から羨望の眼差しで見られるほど理想的な夫婦でした。



そんなある日、夫婦は女の赤ん坊を授かりました。



二人はその赤ん坊に「シンデレラ」と名付け、大切に大切に育てました。



数年が経ち、シンデレラは美しく、心優しい少女に成長します。



誰が見ても、幸せな家族でした。






ですが、シンデレラが十三歳になった頃でしょうか。



シンデレラの母の体調がどんどん悪くなっていったのです。



そして一年も経たない内に、彼女は静かに息を引き取りました。



死因は、近頃流行していた感染病でした。



泣き崩れ、食事もままならなくなったシンデレラを見るたび、父の心は酷く痛みました。





……それと同時に、父の中にある一つの感情が浮かんできたのです。



それはまさしく「憎悪」でした。



自分が愛した妻がもうこの世にいないことを知りながら、目の前にいる妻と同じ顔をした娘を育てることは彼にとっては苦痛でしかありませんでした。



だから、彼はシンデレラに冷たく当たったのです。






シンデレラの母親がこの世を去って三年が経った頃、父は新しく妻を娶ることに決めました。




そう。




この先の展開を、まだ誰も知らなかったのですから。




唯一、シンデレラを除いては――――――
< 1 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop