先生、と呼べなくなる日まで。
先生は私を追い越し、そのまま校門を通り抜けて、スピードを落とし駐車スペースにバイクを停める。
私は小走りで、ちょうどバイクから降りた先生に駆け寄っていく。
「おっはよ!先生」
先生は黒のヘルメットを外しながら微笑む。
『おはよう、あみ』
先生が私の名前を口にするたび、胸がぎゅんと締めつけられる。
先生が『あみ』と私を呼べば、
その言葉はひと粒ずつの水滴になって私の心の内側を滑っていくみたいだ。
こちらからは決して掴むことはできないけれど、私の心は確実に掴まれている。
私は、切ないような何とも言えないこの気持ちを先生に悟られないよう笑みをつくった。
『おはよー、あみ、先生!』