形なき愛を血と称して。【狂愛エンド】
『愛されたかったんだね、君も』
(一)
引きずられるようにして来たバスルーム。冷水を浴びせられる責め苦の中、彼はいつものようにその身を彼女に捧げる。
「ほら、トトちゃん。飲むんだ。僕の血を。君の中を、僕で満たしたい。それこそが、僕の愛なのだから。命を削ってでも、君に全てをあげたい。さあ、さあ!」
震えるトトの肩を掴み強要する眼差しは血走っていた。必死の形相。対するトトは、首を横に振り、固く口を閉じている。
「どうしてだ!飲みたいだろう!?君は吸血鬼なんだ!人間の血が欲しくてーー僕の血が欲しくてたまらないはずだ!」
己の脇腹にーー傷に指を入れ、血まみれとなったそれをトトの口にねじ込んだ。
柔らかな上唇と下唇の間に入った指は、歯の壁に阻まれるが、奥歯まで撫でれば苦しげにせき込まれた。
阻む物に隙間が開く。
「ふっ、ううっ」
リヒルトの指を噛みきることが出来ない以上、後は成されるがまま。リヒルトの腕に拒否の手が添えられたが、指は喉元にまで滑り込んできた。
「げほっ、かはっ」
上体が動くほどの大きな咳き込みをしても、リヒルトからの“食事”は与え続けられる。
「や、だ、もぅーーっ、はっ!」
身じろぎする体を押さえつけるように馬乗りにされる。重くのしかかる体は押しのけられず、リヒルトの強要に身を委ねるしかなかった。
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