形なき愛を血と称して。【狂愛エンド】
「もう、やめてっ!」
拒絶の意を、確かな物にした。
言葉だけならば、ずっと言ってきた。
それでも無理なら、別の手段を。
手の平の痛みを自覚するまで。
頬の熱を自覚するまで。
互いに時間がかかった。
「……ぁ」
トトの平手が、力なく落ちる。
拒絶に暴力を加えてしまったことを後悔するのは、当然だった。
リヒルトを傷つけたくないならば、痛みを与えてはならない。すぐに謝罪が喉元まで出掛かったが、呑み込んだ。
こうでもしなきゃ、分かってもらえないと思ったからだ。
言葉だけでは、ダメだっただから。
行動した本人でさえも有り得ないと思う行動だ。受けた側は、尚も呆然。しかして、彼女にそんなことをさせてしまうほど愚かな行為をしていたのだとは分かる。
今更にして、分かった。
「そこまでして、僕を拒絶するのか」
『愛されなかったんだね、君も』
ーー“結局”。
「僕は、誰にも愛されない。けど」
何も言わないトトに、口付けをする。
自身の唇を噛み切った血まみれの口付けを。