K
Kはある日、1人の少女が
こちらをじっと見つめているのに気付いた。
何故あの少女は遠くから自分を見つめているのだろう。
Kは少女へゆっくりと近づきました。
少女はKを恐れることもなく、
尚もじっとこちらを見つめています。
Kは少女を上から見下ろして言いました。
「何故おびえないのか」
少女はそんなKにこう答えました。
「だってあなたの目、
とても真っ直ぐなんだもの」
「目が?」
「そうよ。
だから私はあなたが好きなのよ」
「本当に?」
「さぁ、歌を歌って聴かせて。
いつものように楽しい歌を」
Kはそんな少女を見下ろすことをやめました。
同じ場所に立ち、
少女のために歌を歌いました。
その日からKは、
少女と常に一緒にいるようになりました。
Kは弱々しい少女に光を与え、
少女はKに
沢山のことを教えました。
少女は明るく健康に。
Kは人の心がわかるようになりました。
時折ぶつかり合う時には
少女は塞ぎ込み
Kはたちまち心を
忘れてしまうこともありました。
それでも2人はいつも一緒でした。
少女は時折、全て持っているKへの
身分違いな恋に胸を傷めることもあったのです。
自分が一緒にいてもいいのだろうか、
と。
しかしKは、少女に言うのです。
「これからも一緒に。」
……………………………………
長い月日が経ちました。
長閑な国の、谷の上。
それはそれは穏やかな王様と、
明るく元気な少女がおりました。
町では人々の賑わう様子が見えました。
王様は人々に心から慕われ、
そうして人々の前で歌うのです。
長閑な国の、賑わう町で。
隣で笑う少女と共に、
幸せに暮らす王様がおりました。
Kの名が知れわたり、
外から沢山の人々が足を運ぶようになったのは、
まだまだ少し先のお話です。