好きになった相手には大体相手がいるんです
「詩真ちゃん、何食べたい?」

前を向きながら悠木君が尋ねる。

「え?・・・なんでもいいよ。嫌いなものないし・・・」

実際はそこまで考えておらず咄嗟に何も答えられなかった。

だけど・・・

「女の子ってみんなそう言うよね。何でもいいって・・・
 でも男としてはこれが食べたいって言ってくれる方が
助かるんだよね。・・・・じゃあ・・・どうしようかな・・・」

あー!失敗した。

確かにそうよね。質問を質問で返している様なもんよね。

「悠木君!私・・・鰻(うなぎ)が食べたい。」

なぜ鰻と言ったのか自分でもよくわからなかった。

もっとおしゃれにイタリアンだとかパンケーケーキとか

にすればよかったのに、鰻って・・・鰻って好き嫌いあるのに

あーどこまで失敗したらいいの?

鰻が食べたいと言った直後に私は肩をガクッと落した。

すると私の横でクククっと笑い声が聞こえた。

少し顔を上げ横にいる悠木君を見ると

「いきなり鰻か~~。詩真ちゃんさすがだわ」

笑われてるよ・・・

あー。せっかく希からもらったチャンスは車に乗って5分以内に終わった。

そう思ったのだが、

「実は、俺も鰻大好きなんだよ。でも希が・・・・あいつ鰻嫌いでさ
 だからと言って一人で鰻も少し抵抗があってさ・・・」

え?悠木君・・・鰻好きなの?

食べ物の趣味も同じなの~~嬉しすぎるんですけど~

にやけてしまいそうな顔を見せまいと視線を外へと向けた。

「よし!じゃ~~今日は2人鰻を食べよう!いい店知ってんだ。」
悠木君のうれしそうな声と笑顔に倒れそうになった。
 

私と同じ鰻好きなのね!

鰻が好きでよかったと心から思ったのだった。

最初のお約束。はしゃがないは・・・守れそうになかった。

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