愛は呪縛
「濡れちゃうよ」
スッと傘が頭上を覆った。
驚いて横を見たら、私より背の高い、知らない男の子。
「どうしたの?お姉さん」
ふわふわした茶髪が印象的な彼は、ハッキリと私に言った。
「泣きそうな顔してる」
指摘されて初めて、自分が酷い顔をしているのに気づいた。
慌てて顔を背けると…。
「泣きたくなるようなことでもあった?よかったら、俺に話して…?」
なんて、優しい声で甘く囁いてくるから。
全然知らない相手なのに、甘えてもいいのかなって思ってしまって。
ぽろぽろと、さらけ出してしまった。
私の胸の内。
「お姉さん、可哀相に…」
聞き上手な彼は私をアパートまで送ってくれた。
そして、ドアの前に来たところで――。
「俺が慰めてあげる」
後ろから、そっと抱きしめられた。