ハナミズキは白く咲き誇る
強く優しく
思わず振り返ると、
仁は
「どうする?」
と、聞く。
「…一緒に行きたい」
仁はハンバーガーの包み紙をクシャクシャに丸めて
ポンと私の膝のハンカチの上に置いて
スッと立ち上がった。
「じゃあな
6時に迎えに行くよ」
フッと仁が微笑んだ。
「ん、ありがとう」
グループ”A”、氷室仁。
私が知っている氷室家の主な事業は、
護身術を主とした道場の他
芸能プロダクションHMと複合レジャー施設の経営。
でもそれらは全て表向きの顔にすぎず
本来の姿は、裏社会のドンだと言う。
圧倒的財力と権力を誇る西園寺家の御曹司、西園寺洸と並んで、青扇学園の代表とも言える存在だ。
いつも不機嫌そうである仁は、
太陽のような西園寺洸と並び賞されて、
”ブルームーンの君”と言われている。
背が高く、バランスのとれた完璧なスタイルに美しい顔。
私が所属するモデル事務所にだって、あんなに綺麗な男の子はいない。
西園寺洸と並んで
学園の女子の憧れの的だ。
仁にエスコートされて、パーティに現れたとなれば
もう二度と、佐久間に強引に誘われずに済むだろう。
ベンチを立った時には
ここ数日、暗く尾を引いていた憂鬱な陰が吹き飛んできた。
「バイバイ」
見上げたハナミズキにそう言うと
『よかったね ララ』
ハナミズキがそう言っているような気がした。