Wildcat~この愛をあなたに~
「でも帝って名前すごいですよね」
帝さんの笑顔が曇った気がした
「そう?美空ちゃんだっけなにか欲しいものない?」
「えっ···あっ別になにも」
「住むところとか困ってない?」
なんでわかっちゃうの??
「特にないです」
「ならいいけど
なんなら僕の家に遊びに来ない?
今週の日曜日とか
それが僕からのプレゼント
でも本当に欲しいものがあるならいいなよ?」
「はい」
半ば強引とも言える形で約束され私は頷いた
冷製パスタを食べデザートまで食べ終わり私は帝さんにお礼を言った
「一希に飽きたらいつでもおいで」
帝さんは立ちあがるとにっこり笑って私を抱きしめた
「ちょっと」
「放したくないなこのままずっと一緒にいたい」
耳元で帝さんの甘い声がする
「帝さん···」
「一希になんて渡したくないずっと僕の物にしたい」
「私いかなきゃ」
「お店で待ってるから」
私は逃げるようにその場から離れてオフィスに戻った
スマホを見れば着信ありと表示されていた
着信相手スミレ···
私はどうにも気になり電話をかけた
「一希ぃ?」
若い女性のようだった
「あっごめんなさい」
「誰あんた?
そっかぁ一希の彼女?
ごめんねー勘違いしてる?
私、一希の母親なのよ」
「へっ?」
「たま~にねお店に顔だすだけの仲になっちゃったけど」
「そうなんですね」
「でもあの子には本当にひどいことをしたわ」
あの顔の火傷···
それをさらりと言っちゃうなんて
「ちゃんと一希さんに謝ったほうがいいと思います」
「一希が悪いのよ」
「誰のせいだ」
えっ···?
今なんて?
後ろを振り返ると鬼の形相の一希さんが立っていた
「あっ···」
あれよあれよというまにスマホをとりあげられ通話を切られてしまう
「一希さん」
「なに話した?
答えろよちゃんと」
「別になにも」
「部屋は勝手に使え
今日は帰らない
店にも行かないから」
怒らせちゃった
けっきょくその日は何にも手につかないまま仕事も途中に早退した
どうしていいかわからずとりあえず自分のマンションの前まで来た
いまさらだよね···
だって一希さんのアパートに帰ったって鍵ないし
マンションのエントランスで倦ねていると槙と女の子が歩いているのが見えた
いいなぁ幸せそう
しかたなくタクシーでお店に行った
地下に続く階段を降りてお店の前でしゃがみこんだ
「どうしたの?」
「帝さん」
「待っていまドア開けるね」
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