Wildcat~この愛をあなたに~
帝さんに開けてもらってお店に入る
開店前の静まり返ったカウンターに冷たい烏龍茶が置かれる
私は少しずつ帝さんに話した
「一希はそうなんだよ昔からね」
「帝さんと一希さんってどういう関係なんですか?」
「君にはどう見える?」
「わからないですよそんなの」
「恋人だよ」
確かこのくだり前に聞いた気がする
「冗談ですよね」
「さあね
恋人のように寄り添ってけたらもっと理解できたのかもね」
帝さんはカウンターから私の座っているスツールに移動する
そして後ろから抱きしめた
「いいなぁ一希は
君を独占できるんだから」
「帝さん」
「好きじゃなかったら君をあんな目でみないよ」
「一希さんは···」
私のこと好きじゃありませんよ
なんてやっぱり言えなかった
わからない一希さんがどう考えてるか
「邪魔したな」
えっ···店には来ないって言ってたのに
「一希さん」
「なんだよ、おまえになにがわかるんだよ」
「一希みっともないよそういうの」
帝さんはまだ私を抱きしめたまま頬ずりをしてくる
「···バカだよな
おまえのこと探してやったのに」
一希さんはテーブルに鍵とスマホを置くとそのまま出て行ってしまった
私を探してた?
追いかけなきゃ···
「帝さん私いかなきゃ」
「どうして?
また傷つくだけだよ」
「それでもちゃんと伝えなきゃ」
私はスツールから降りて鍵とスマホを持って駆け出した
なんでこんなときにヒールなんてはいてきたんだろ
慌ててヒールを脱ぎ階段をあがる
一希さん足速い
階段をかけあがると息がきれるのもかまわず私は道路にとびだした
ほとんど賭けだった
でも私の前で黒のレンジローバーが停まる
「おまえなにやってんだよ」
「だって···」
「ったく乗れよ早く」
私はレンジローバーに乗りこんだ
「自殺志願者かなにかか?
俺じゃなかったらどうするつもりだったんだよ」
一希さんはタバコを吸いながら器用にハンドルをさばいている
「うっ···それは」
一希さんは路肩に車を停め私を見る
「怪我してる」
見れば足から血が滲んでいた
ヒールはかずに走ったからかな
また怒られるとぎゅっと目をつぶっているが一向に怒鳴り声はしなかった
「ごめんなさい」
「なんでおまえはそうなんだ」
ビリリと何かが破れる音がして足の甲にぎゅっと不器用ながら結ばれた布
「あっ···」
「ったくなにやんてんだかな俺」
この布一希さんの羽織っていた黒いシャツ
「ごめんなさい」
< 12 / 32 >

この作品をシェア

pagetop