Wildcat~この愛をあなたに~
体の芯からとろけてしまいそうな快感の波の余韻に浸っているとまたキスをしてきた
「槙だっけ忘れろよ
おまえは俺だけに甘えてればいいんだ」
「かなり強引なんですけど」
「イヤならいい
ダンボールでも好きなとこに入って暮らせいいな?」
「それは困りますよ
仮にも女の子ですからね私」
「仮だろ」
「あのですね」
「とりあえずシャワー浴びて来いよ」
「あっはい」
私は促されるままシャワーを浴びに行った
強引だけど優しいんだよね一希さんって
シャワーを浴び終わって部屋に戻ると着替えを終えた一希さんがソファーで眠っていた
一希さんを起こさないように冷蔵庫を確認して買い物に行こうと外に出た
初夏の風はなまるぬくて少し苦手だ
今日は私の得意料理を作ろうと決めてお財布片手に歩きだした
歩いて10分くらいのところにスーパーがあり野菜やらお肉やらを買っていく
まるで新妻の気分と楽しくなってしまう
買い物袋を持ちながらアパートに着くなりさっそく料理にとりかかった
するといつの間にか背後から一希さんに抱きしめられた
「危ないですよ」
「俺がこうしたいんだから」
「もう甘えん坊なんですから」
「寂しがり屋なんだよ俺は」
「向こうで待っていてください一希さん」
「一希でいい
槙は槙って呼んでたんだろ」
「なんか慣れなくて」
「おまえの口から聞くまで離れない」
「うっ···一希」
「本当かわいいなおまえ」
頭を撫でてぱっと離れていく
そういえばこの部屋ってテレビないんだ
違和感の正体はそこだった
「テレビないんですか」
「必要ないだろ」
「うるさいのも苦手ですか?」
「必要がないからないんだよ
おまえみたいなお喋りオウムがいたら尚更だ」
「お喋りオウムって」
「なに作ってんだ?」
「内緒」
私はお味噌汁を手早く仕上げポテトサラダと生姜焼きにとりかかった
ポテトサラダができあがる頃、ちょうどご飯も炊きあがった
テーブルに並べると一希さんが子供みたく目を輝かせた
「うまそ」
「本当に?」
「見た目だけな」
「うっ···」
でも箸をつけた表情はおいしそうだったので安堵する
「美空、俺はおまえを裏切らないけど俺がおまえを裏切ったらごめんな」
どういう意味だろう
「なんですかなぞなぞですか?」
「違う」
はっきりと言われて一希さんを見直す
「じゃあどういう」
「そのうちな」
なんだか一希さんが遠くに行ってしまうようで怖い
「いきなりいなくならないでよ?」
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