Wildcat~この愛をあなたに~
でもやっぱり一希さんからの返答はない
「ごちそうさま」
「おいしくなかったですか?」
「元よりあまり食べないからな」
一希さんはシャワー浴びてくるとだけ言って行ってしまった
タイミングよくスマホが鳴ったのででてみる
「はい」
「帝です」
「帝さん」
「大事な話しがあるんだ
君にもちゃんと話さないといけないから一希のこと
どうせ当人からは聞いてないだろ
だから教えてあげる
タクシー代はだしてあげるから」
知りたい気持ちが勝って私はエプロンを置いて外に出た
タクシーを呼び止めお店に向かった
Brうさぎの穴
一見、見落としがちな小さな看板に地下へと続く階段
まるで私は不思議の国に迷い込んだアリスのようにドアを開けた
「やっぱり来てくれたね」
「帝さん」
「改めまして西園寺帝です」
えっ···あの西園寺グループの?
「一希さんのこと教えてください」
「君は浅はかだね
一希を餌にしたらやっぱり君が釣れた」
「騙したんですか」
「騙したなんて人聞き悪いなぁ」
「私、帰ります」
「僕は君といたい」
帝さんは私の手首をつかんで引き寄せる
「きゃっ···」
「一希の名前なんてもう呼ばせない
君は僕だけの人形」
私は帝さんの手を振り払おうとした
「帝さん、一希さんが何を考えてるかなんて私は本当にわからないんです」
「でも君は好きなんだろ?」
とんと私の背中が壁に着いた
私はゆっくりと言う
「わかんないんです」
そこまで言うと帝さんがとつぜん笑いだした
「君は本当におもしろいね
わからないか、うん君らしいね」
「帝さん?」
「いやぁ参った参った
降参、僕の負け
さあ座って」
帝さんに促されるままスツールに腰かけた
「帝さん」
「この店は君が知ってるかわからないけど青山組の傘下にあるんだ
それでどうしてもお金を払い続けている
でも最近はなかなか経営も厳しくてね
店長も手を尽くしてるらしいけどどうなるか
一希も優しいから手を出したら店がヤバいのを知ってるんだよ」
「それで」
「まあね
一希がここに来たのは一年前
あの日は雨だった
僕がゴミを捨てに裏口を開けたら一希が捨てられてた
最初はびっくりしたよ警察にも通報しようか悩んだくらい
僕は西園寺家を出て行ったんだ自分から」
「2人でなんだかいい感じだね」
「おつかれさま」店長」
「あれ一希は?
今日、誕生日でしょ?
だからスミレさんが来るのに来てないね

「今日、誕生日なんですか?」
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