Wildcat~この愛をあなたに~
一触即発な空気を変えたのは店長だ
「出て行って目障りだよ」
「なに偉そうに
あんたが張本人な癖に」
「言うね、確かにそうかもしれないけど僕は謝らない」
店長が言っているのはいつのことなんだろう
「まぁ仲良しなのはいいけど後悔しないように」
それだけ言うと行ってしまった
「どういうつもりだよ店長」
「騙すつもりなんてさらさらなかったようん」
「話してよこのままじゃ僕も一希も納得いかない」
「まあそのうちね」
一希さんが一気に飲み干したワイングラスが派手に割れる
「なっとくいかねぇ」
「いっちゃん、帝くん大人な事情だよ
帝くん本当に助かったよ
さっそくで悪いんだけどやっぱりお店を閉めようと思う」
一希さんは店長に詰め寄る
「なんで俺らに相談しないんだよ
納得いかねぇよな帝」
「うん」
「私もお手伝いします」
なにができるかなんてほぼかけに等しい
一希さんなんて笑いをこらえてるし帝さんも目を丸くしてる
「大丈夫?」
帝さんが絞り出した声、僅かにうわずってるでもやらなきゃ
「私これでも仕事では色々レイアウトを考えてるんですよ」
「ガキの工作か」
「一希さん私の実力みせてあげます」
とは言ったもののなにをどうすればいいのやら
周りを見渡せばただ薄暗い地下だし入りずらい
でもそこがこの『うさぎの穴』たる由縁だ
「そうだアリスのティーパーティ」
「はっ?」
最初に来たときから思っていた
帝さんが帽子屋で白うさぎは店長さん
そして一希さんはチェシャ猫
そうと決まれば衣装を作ってお店をトランプやらを使った装飾を施さなきゃ
「ひとつ訊いていい?
アリスは君かい?」
「帝さん違いますよ
私はハートの女王です
アリスはここに来るお客様ですって一希さん」
もうダメと言わんばかりに笑い声がする
「おまえが女王?
さながらヒキガエルだろ」
「一希は本当にチェシャ猫が似合うね羨ましいよ」
帝さんだってマッドハッターをやったら様になりそう
「とにかく一希さんは猫耳ですからね」
「しかたねぇからつきあってやるよ」
「僕も」
店長が手をパンパンと鳴らす
「店じまい店じまい
帰って明日に備えよう」
けっきょくこの日は考案だけで終わってしまい一希さんのアパートに一緒に帰った
「おまえケーキ食う?」
「あっはい、置いといてください」
「わかってないなぁ
俺はおまえに祝ってほしいんだよ」
私は鉛筆の手をとめてかまってちゃんな一希さんの方を向く
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