Wildcat~この愛をあなたに~
手にはケーキとワインのボトル、口にはタバコ
「一希さんおめでとうございます」
「おまえもうちょい可愛く言えねーの?
例えば一希おめでとうとか
だから槙に捨てられるんだよ」
一希さんの妄想力はすごい
声音まで変えて言うんだから
「一度だけですよ?
一希おめでとう」
「やっぱ似合わねーわ」
「ならやらせないでください」
「さてと」
一希さんはタバコの火で蝋燭に火をいれた
もちろん29本あるわけではないけれどとてもキレイだった
「キレイ」
「さあ吹き消してハートの女王さま」
とは言ったもののけっきょく一希さんも横から吹き消した
「一希さん?」
「おまえを拾って俺も変われたわ、ありがとな」
一希さんの照れ笑い初めて見た
すごく少年っぽくてあどけない笑顔
こういうところに女の子ってひかれるんだろうなぁ
「いえ、たいしたことしてないですから」
「そうだな」
「そこ否定するとこですよ」
「まあ誕生日を飼い犬とやられたからいいか」
ポンポンと頭を撫でられる
「飼い犬って」
「ポメラニアンっぽいな」
「(笑)じゃないですよ」
「つーか眠い」
「えっ···ケーキ食べないんですか」
「食べていいよ」
悪意のある言い方で言い放って一希さんはソファーで眠ってしまった
私も明日は日曜日だしお店のレイアウト頑張らなきゃ
私は草案を書きながら眠ってしまったらしく気がついた時には一希さんはいなかった
朝から出歩くなんてあまりしなかった
でもあいつが店のレイアウトだなんだ言ってたからたまには掃除と思ってドアを開けた
「早いねいっちゃん」
「少しいいか?」
「いいよ、なに呑む?」
「コーラ」
俺の前にコーラを置くと店長が言う
「頑張ってる?」
「さあな
少なくとも俺はあいつに救われたのかな」
「どうだかね
それ痛いの?」
店長が指し示したのは蜥蜴のタトゥー
「ほっとけよ俺とあいつの繋がりだ」
「君が繋がりなんてね
捨てたくないものが増えると逆に大変だよ
まっ大きなお世話か
その顔の火傷きいていい?
逆恨みだよね母親にやられたわけじゃないよね
それにいっちゃん狡いよ知ってたんでしょ
だって君、青山組年少組の元副リーダーだったんだもんね
本当にいちばん狡いのは君だよ」
トンと音がしてナイフが的を射抜いた
「痛いのは傷じゃない心なんだよ」
「誰の頼みだった?」
「別に
俺はケジメをつけたし今の俺は昔の俺じゃない」
「だよねだいぶやらかくなった」
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