Wildcat~この愛をあなたに~
「もうやんないからな」
「うっ···」
「つーかなに言われたんだよ」
「一希さんが青山組と」
「ああそうだよ
でもな俺はケジメをつけたんだよ
争ってた島を牛耳ってた奴らをひとりで壊滅させてな」
「···」
「怖くなったろ?
とりあえず電話きるからな」
けっきょくなにも言えないまま会話が終わりいつの間にか帝宅についていた
まるで中世のお城をイメージさせる外観にバラや木々たちの庭
庭師さんが手入れしているらしい
「すごい」
「すごい?普通だよ
さああがって」
「はい」
促されるまま中に入るとやはり中もお城みたいだ
「綺麗」
「食事にするよ」
「はい」
食堂に案内されるとすぐに席に案内され食事が支給された
「好きな物を食べて」
手をのばしたパンはふかふかで焼きたてのお肉は最上級のものだった
「おいしい」
「良かった
ねぇ美空、僕と暮らさないか」
「えっ···」
「なんで困るの?
困らせるためによんだんじゃないんだけどな
それとも一希を待ってるのかな」
一希さん、その言葉で顔がちらつく
「私、帰ります」
帝さんは細いくせに力強く腕をひいて私を後ろから抱きしめた
「行かないで」
「···ごめんなさい」
私は無理やり振り払って外にとびだした
外にとびだした私はブレーキ音にたじろいだ
窓を開けて運転手が言う
「ったく危ねぇな」
「一希さん」
外に出てきた帝さんは平然と言う
「早いね一希」
「そう?」
「一希いってたよね興味ないって」
「さあ記憶にないな」
「つーか帰って手伝え」
確かに一希さんの指にはバンドエイドが所々に巻かれていた
私は一希さんの車に乗り込んだ
どうして一希さんの隣はこんなに落ちつくんだろう
どうして大好きって言えないんだろう
言葉はここまできてるのに
「なにその格好」
「あっ···」
そういえばドレスそのままだった
私は運転中の一希さんの肩に頭を預けた
一希さんの香水の匂い···落ちつく
槙にはこんなに素直にあまえれなかった
槙はこんなに私を甘やかしてくれなかった気がする
「なんだよ」
「なんでもないです」
幸せってたぶんこういうことを言うんだろな
一希さんはなにも訊かない
だから一緒にいても疲れない
私はそのまま眠ってしまい一希さんに起こされるまで気づかなかった
「姫様、到着いたしましたよ」
「ん···」
お店に一希さんと行くと店長が奮闘していた
「いっちゃんったら僕に預けてって」
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