Wildcat~この愛をあなたに~
そう私は一希さんにお姫さま抱っこをされていた
一希さん細いけど力あるんだよね
「あのもう大丈夫ですから」
私は恥ずかしくなりそっと降ろしてもらった
「帝くんからのプレゼント?
まるでシンデレラだね可愛いよ
ねぇいっちゃん?」
「別に」
「ほらいっちゃん素直じゃないんだから」
「一希さんには期待してませんから」
むくれる私に一希さんが言う
「言えばいいんだろ言えば
まあ別に悪くないんじゃね?」
きっとそれは一希さんなりの照れ隠し
「はい、ありがとうございます」
「つーかあとなにやればいい?」
「あっえっと飾りは大丈夫なんで衣装なんですけど」
普段から一希さんはラフな格好だし
そもそもこのお店、制服ないんだよね
ため息をついて一希さんは着替えてくると言って奥に行ってしまった
戻ってきた一希さんを見てびっくりした
まるでよく漫画とかで見るバーテンの格好そのままだった
「なんだよ?」
「普段とがらりと違うんだなって」
「めったに着ないからな」
一希さんは首もとのネックレスをいじりながら言う
「いっちゃんはそうしてればもてるのに」
私はその言葉に反応してしまった
「別にもてなくてもいいです」
「なんで?美空ちゃんもしかして一希のこと···」
「そういうわけじゃないです」
私は慌てて訂正した
「あれいっちゃんどうしたの?」
「ちょっと裏にいる」
「えっ」
なんでだろうと思っていたが一希さんがいなくなってわかった
ドアが開いたとき一希さんと見紛うくらいの黒髪の女性が現れた
「いちきぃ」
甘い声でも少しお酒くさい
「すみれさん呑んでく?」
「いちき、いるんでしょ?」
呼んで来ようとする私を慌てて店長が呼びとめる
「今はダメ、刺激しないほうがいい
ちょっとこっち来て」
「あっはい」
私はカウンターの下にしゃがんだ
「いっちゃんのお母さんは酒乱なんだよ
精神的に病んでてね
幼いいっちゃんしか覚えてないんだって
逃げてるいっちゃんも悪いんだけどね」
「でもそれじゃあ」
バタンと音がして一希さんが現れた
「あら修さん」
あれすみれさんの機嫌よくなった?
「ちなみに修さんはいっちゃんの父親ね」
一希さんは当然のようにすみれさんにキスをして隣に座った
「修さん」
一希さんは何も言わずただタバコをくゆらせていた
私は何も言わずただみつめていた
「悪い水割り」
一希さんがそういうと店長が怪訝な顔をする
「ちょっと」
「大丈夫」
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