Wildcat~この愛をあなたに~
私は店長さんに言われたようにお酒を作り一希さんの前に置いた
「はい一希さん」
つい口が滑ってしまった
グラスが割れる音となにかが当たる音がした
「彼が私の一希のわけないじゃない
彼は修さんよ」
憤慨するすみれさんに謝り続ける私
「いっちゃん助けてあげなよ」
ため息がしたかと思うと一希さんはすみれさんを壁際に追いつめた
「目さませよいいかげん」
「一希さん」
走りよろうとした私はグラスが割れてたことも忘れ滑った挙げ句に指が切れてしまった
「なにやってんだおまえ」
「だって···」
立ちあがろうとして気づく
せっかくのドレスぐちゃぐちゃだ
指も痛いしなにやってんだろ私
「なんでおまえはそうなんだよ」
「ごめんなさい」
「近づかないで」
えっ?やっとのことでたちあがった私
でも避けることはできない
ぎゅっと目を瞑っていると後ろから声がした
「目、開けていいよ大丈夫だから」
帝さん?
目を開けると帝さんが背後から抱きしめる形で立っていた
でも手にはすみれさんが振りあげた硝子の破片が···
「帝さん」
「やっとちゃんと呼んでくれた」
「いま手当しますから」
一希さんがなんとかすみれさんをおとなしくしてくれて事態はおさまる
スツールに座りながら帝さんは私の手当てを受けていた
「けっこう痛いもんだね
まっそもそもは一希のせいだから」
帝さんはちらりと一希さんを睨みつけた
「なんでここにいるんだよ?」
「なんでって手伝うため」
「いっちゃんありがとうだよこの場合」
「いいのいいの期待してないから」
「帝くんそんなこと言ったらいっちゃんもっと拗ねちゃうよ」
「ん~まっいんじゃない
って僕ちょっと出かけてくるよ
すみれさん送ってかなきゃだしね」
帝さんはそういうとすみれさんの元に行ってしまった
「いっちゃん座ったら?」
「···」
「いっちゃんの悪い癖だんまり」
とんと一希さんの前にグラスを置く
ついでに座ってしまった私の前にも
「私、お酒のめないですよ」
「ガキ」
「どうせガキですよでも一希さんのほうがよっぽどガキです」
一希さんは何も言わずお酒を飲み干す
私の前からグラスを奪って飲み干す
それでも飽き足りないのかバーカウンターに入りお酒のボトルを手に取った
「やめときなよいっちゃん」
「おまえになにがわかるんだよ」
「やつあたりしないでよ」
「うるせぇよ」
一希さんはカウンターの隅で飲み始めた
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