Wildcat~この愛をあなたに~
「またそうやって1人で完結させちゃうんですね」
「それは僕の悪い癖なのかもね
さあ行こうか」
「はい」
私は帝さんと一緒に歩き出した
「やっぱ外、苦手かも」
「帝さんっていくつなんですか?」
「ん?いくつに見える?」
「一希さんより上ですか?」
「そう見える?
一希よりは若いかな」
いつになってもつかめない帝さんの態度
「帝さん」
「ん?」
「先ほどはありがとうございました」
「敬語やめよっか
一希が少しうらやましい
美空と普通に話せるから」
そんなことないって言いながら街を歩いていると偶然、槙をみつけた
しかも可愛い彼女つれてる
みないふりをしようと決めたのに横目で追ってしまう
槙も気づいてこっちを見る
「よっ美空じゃん
元気してたか?」
相変わらず軽々しい
「うっうん
槙こそかわいい彼女だね」
「まあな」
もう昔のこと
私は過去の女
槙にしたらそれだけの存在
でもなんでもやもやするんだろう
「美空こそ新しい彼氏か?
前に見た奴とは違うな」
一希さんのこと
「うっうん」
「美空はやれればそれでいいんだもんな
じゃな」
私はそんな尻軽女じゃないよ
「そうなの?」
「帝さん誤解です
違いますからね」
「俺には許さないくせにね」
別に帝さんがキライなわけじゃない
でも違う気がする
「帝さんタイヤキ好きですか?」
「なにいきなり
まあ好きだけど」
確かこの辺りにおいしいタイヤキ屋さんがあるはず
私はずんずん歩いていき小さなタイヤキ屋さんの前で止まった
「おっ美空ちゃん久しぶり」
お店のおじさんとは仲良しでよく買いに来ていた
「うん」
「そっちは彼氏?」
私は返答に悩んでしまった
「いいんじゃない?そうみえるなら」
「じゃあはい」
私は帝さんと手分けしてタイヤキの袋を持ち帰った
お店に帰ってもまだ一希さんは眠っていて寝顔はまるであどけなく無防備
一希さんを軽く揺する
「一希さん」
「んあ?」
ふわっと欠伸をする一希さんはまるで猫のようだ
「いえ」
切れ長の目にかかる長めの睫
ダメダメ魅入っちゃ
「なんだよ」
「タイヤキ」
「いらね」
「美味しいですよ」
私は毒味役のごとくパクリと食べた
「いっちゃん大丈夫?」
ことんと水が置かれ一希さんは飲み干してしまった
「なあ」
「はい」
「なんでもねぇ」
「どこ行くんですか」
一希さんは玄関のほうへと向かう
「ほっときなよ」
「でも···」
一希さんあきらかにおかしい
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