Wildcat~この愛をあなたに~
何故か気になり一希さんの後を追う
声をかけようか迷ってけっきょく様子をみるだけにした
一希さんはお店からさほど離れてない路地を曲がった
細道を歩いていくが見失ってしまう
私は後ろから誰かに抱きしめられた
「捕まえた、かわいい子猫ちゃん」
「一希さん」
「なあ本当に俺のこと○○なの?」
えっ?なんて言ったの聞こえなかった
一希さんは少年のように笑って私の髪をわしゃわしゃ撫でた
「いまなんて?」
また後ろから声がする
「だから腹へってたんだろって」
「へっ?」
それだけ?
私は振り返って違いますって言う
一希さんはにやりと笑ってタバコとお酒のにおいのするキスをしてきた
「おまえがなかなか言わないから」
「うっ···好き
一希が好き、大好き
これでいいんでしょ
これが正解なんでしょ」
私は泣きながら一希さんに抱きついた
「わかってねぇな
違うんだけどな」
「はい?」
「本当に腹へってない?
それに仮にそうだとしても女から迫られんのは大嫌いなんだよ」
しょぼんとする私をよそに一希さんは本当にランチを考えてるようだった
「帰ります」
「どこに?」
「お店、まだやることがあるから」
「飯は?」
「いらないです」
さっき一希さんはなんて言ったんだろう
わからないまま私は一希さんに手をひかれるまま歩きだした
いらないって言ったのに一希さんは寂れたラーメン屋の暖簾をくぐった
「いらないです」
「きこえない」
カウンターに座るなり温かなラーメンが2つ運ばれてきた
「へいおまち」
「サンキュー」
一希さんは箸を割るなり食べ始める
私はカウンターをばんと叩き立ちあがった
「帰ります」
「待てよ、なに怒ってんだ?」
「一希さん無神経すぎます」
「そう僻むなよ
後で抱いてやるから
その前に腹拵え」
私は一希さんの頬を叩いてしまった
聞きたいのはその言葉じゃない
抱いてほしいのは寂しいからじゃない
ワタシをちゃんと見て
「最低」
私はお店を出た
もうどうでもいい
帝さんのいるお店に戻るなり鞄を掴んで一希さんのアパートに戻って荷物を取ってふと気づく
同じだあの時と
ただ違うのは槙がいないこと
一希さんはあのベッドで何回、私以外と寝たんだろう
早く行かなきゃ
でも私は一歩を踏み出せずにいた
そのかわり何故か一希さんのベッドの上に倒れ込んだ
「変態」
どれだけの時間が過ぎたかわからない
けっきょく寝てしまったのだ一希さんのベッドで
< 26 / 32 >

この作品をシェア

pagetop