Wildcat~この愛をあなたに~
待ってと言えば待ってくれる一希さんはそういう意味では素直だ
「ん?」
「ありがとうございました
なんかふっきれちゃいました」
「そりゃあ良かったな」
「それで何を買うんですか?」
「きれてた酒」
一希さんはさぞどうでもいいという風に商店街を歩いていく
商店街を歩いているとふいに声をかけられた
「よお一希」
野太い声に厳つい体と顔
黒のスーツ
ただならぬ雰囲気に一希さんはにやりと笑う
「ついてねぇ」
「今月の地代どうなってんだ?
ボスが怒ってる
わかるな?あれはうちの島のもんだ」
一希さんは私を庇うように背中に隠してくれた
「だから?」
「金返せって言ってんだ小僧」
速すぎてよく見えなかったけど一希さんが膝をついた
「一希さん」
「離れんな守ってやれなくなる」
「けど···」
なんとか立ちあがりかけたところで熊のような腕が伸びて一希さんの体が宙に浮く
「客か一希?」
「触るな···こいつには」
ぶんと音がして一希さんの体がゴミ箱に叩きつけられる
駆け寄ろうとした私の手が掴まれる
「離して」
「っ···」
私の声を聞いた一希さんがまるで熊に体当たりする猫のようにとびかかる
「一希さん」
再び一希さんの体が転がる
「なぁ一希もうやめようや」
何度か咳こみながら一希さんは立ちあがる
「触るなそいつには」
痛くなんかない本当は
あいつらから受けた傷に比べたら
「一希よく頑張ったね
君のとこのボスにはちゃんと話しをとおしてあるはずだよ?」
その間延びした声は店長だった
相手はただの八つ当たりだったのかもしれない
その言葉をきいて相手は缶を蹴り飛ばして行ってしまった
「一希さん」
駆け寄った私の手をはねのけて言う
「バーカなんで男に手さしだすんだよアホ」
一希さんは軽く咳こんだ
「一希ごめん」
「平気」
一希さんは足を引きずりながら店とは反対側に歩きだす
「あっ」
「買い物」
一希さんについていくとやはり酒屋さんについた
そこでリストのお酒を買いお店に戻った
一希さんはすぐにお店の奥に行ってしまった
狭い店内でもスタッフルームはあるらしく私はドアをノックした
返事がないのでドアをそっと開けてみる
電気をつけてない暗がり
「一希さん?」
私は電気をつけようとした
「触るな」
「えっ···」
電気のスイッチに伸ばした手を鋭い声のせいでひっこめた
「あぁ悪いつけていい」
意味が分からずとりあえず電気をつけた
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