Wildcat~この愛をあなたに~
「そんなの関係ありません」
「つーか重い、痛い
おまえ何がしたいんだよ」
一希さんなら受け止めてくれる
きっとそう思ったから
私は一希さんの上で泣きじゃくった
何度目か叩いたとき一希さんが頭を撫でてくれた
「気がすんだか?」
「ごめんなさい」
一希さんの胸にぴったり重なっていたので心臓の音が直に伝わってくる
「つーか重い」
「へっ?」
「もう少しダイエットしたらどうなんだよ」
「うっ···ひどっ仮にも女の子に向かって」
「おまえもう少し他人に甘えたら?
可愛くねぇんだよそういうとこ」
「どーせかわいくないですよ」
一希さんは私を引き剥がして座らせるとシャツを脱ぎ捨てた
「まああいつも似たようなとこあったからな
俺がちゃんと受け止めてやれなかったから」
一希さんは別のシャツを羽織り呟いた
「だから私を見捨てなかったんですね」
「見捨てたらおまえどうしてた?」
「えっ?」
「なんでもねぇよ」
ふあっと欠伸をかみころして一希さんは言う
「私シャワー借りますね」
「好きに使えよ」
一希さんはそのままソファーにごろりと横になってしまった
『見捨てたらどうしてた?』
私はどうしてたんだろう
「いつまでも突っ立っててどーすんだよ
明日も早いんだろ?」
ソファーの方から声がする
「寝るんじゃなかったんですか?」
「人の気配がすると寝れない」
なにかの動物ですかと言いかけてやめた
私のことで迷惑かけちゃったし疲れてるよね
私は考えながらお風呂に向かった
でも一希さんに助けてもらわなかったら私はどうなってたんだろう
シャワーも浴び終わり持ってきていた数少ない洋服の中から着替えて部屋に戻る
真っ暗な部屋
ソファーで寝てる一希さんにそっと囁こうとした
腕で顔を隠してるから寝顔は窺い知れない
暗闇でも蜥蜴のタトゥーだけは妖しく今にも動きだしそうだった
「おやすみなさい」
私はそう言って自分の荷物の横で壁に背を預けて眠っていた
でも朝になると何故か私はソファーで眠っていた
床では一希さんが眠っていて危うく踏みそうになった
「起きたのか?」
ふあっとまた欠伸をかみころす
乱れたシャツが様になりすぎていて慌てて視線をはずす
「はい」
「朝から顔あかいけど大丈夫か?」
一希さんはなんでもないという風におでこをつけてきた
「あっはい」
そんなことされたらもっと顔あかくなっちゃうよ
「ならいいけど送ってやるから待ってな」
「あっいいです」
< 8 / 32 >

この作品をシェア

pagetop