あたしは君のラブティーチャー!




……よし!


「陽」


教室の中に誰もいなくなったのを見計らってから、あたしは陽のもとへと歩み寄る。


久しぶりに名前を呼んだ声は、緊張のあまり震えていた。


「……」


あたしに返事をすることはないけど、陽は顔をこちらに向けてくれた。


あたしは、陽の前の席に横向きで腰をおろした。


「えっと……じゃあ、補習を始めようかな」


つぶやいたあたしに、陽はやっと口を開いたけど、文化祭の日から変わらずその言葉は冷たいものだった。


「補習って何なんですか。如月さんは、もう僕の先生じゃないでしょう」


“如月さん”に、へこみそうになるけど、ここで負けちゃいけない。


「陽。あたしは、心から陽のことを応援してた。頼りなかったかもしれないけど、精一杯“先生”やってたつもり。ホントだよ」


あたしの言葉が、陽の心のどこまで届いてくれるだろうか。


まっすぐ奥まで、いってくれますように。



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