あたしは君のラブティーチャー!




「陽のおかげで、勉強がちょっとだけ楽しくなったよ」


ありがとね、と付け加えると、陽はたちまち目を輝かせて少し頬を赤く染めながら微笑んだ。


「わからないところがあったら、またいつでも言ってくださいね。僕でよければ」


「うん、ありがとう」


でも、あたしのことばっかりに構わなくていいからね、陽。


教室を先に出て行く陽の背中を見て、心の中で言った。


陽があまりにも優しいから、つい甘えてしまう。


でも、陽は天川さんともっと一緒にいたいはず。あたしの優先順位は低いんだから、もう少し自重しないと。


勉強を教えてもらえるのは助かるけど、そのことは忘れないようにしなきゃ。


あたしのほうが“先生”でいなくちゃいけないんだから。


放課後、陽と二人きりでこの教室にいるのは、そのためなんだから。


「じゃあね、陽」


「はい、また明日」


陽と別れて学校を出たあと、コンビニエンスストアに寄った。


今朝、母が残していった一万円札で、夜ご飯を買う。


買ったのは、白ご飯に梅干しが乗っていて、焼き鮭がメインのおかずとして合わせられている普通のコンビニ弁当。


母の手料理は、もう長いこと食べていない。


どんな味のお味噌汁を作っていたのか、もう忘れてしまった。



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