あたしは君のラブティーチャー!
メールを返そう……と思ったけど、話が長くなりそうだったので、面倒くさくなりあたしは電話をかけることにした。
数回の呼び出しコールのあと、がチャッと電話に出た音がして、「わわっ」と何やら慌てた様子の陽の声が聞こえた。
〈もっ、もしもし……?〉
「もしもし、陽?あたしだけど、朔乃」
〈はいっ、存じております〉
控えめな声。電話が苦手なのか、いつもよりそわそわした感じに聞こえる。
ていうか、存じておりますなんて敬語、同級生相手に遣わなくても……。
それはそれで、陽らしくて嫌いじゃないんだけど。
「陽。メールの件だけど、明日あたしと2人で出かけて、天川さんとの初デートの予行演習をするってこと?」
〈あ……はい。どういうふうに女の子に楽しんでもらえればいいのかわからないので、朔乃先生の都合が良ければお願いしたいです〉
電話の向こうで、陽が頭を下げてお願いしているような光景が思い浮かんでしまう。
陽に、そんなふうにお願いされたら、断ることなんてできないんだけど……。
正直、あたしは複雑な気持ちでいっぱいだった。
陽と一緒に出かけられるのは嬉しい。
でも、陽にとってはただの練習にしかすぎなくて。
あたしに天川さんを重ねている陽と、1日デートしなきゃいけないなんて。