あたしは君のラブティーチャー!
でも、いくら複雑だからといって、自分の個人的な理由のせいで断るわけにはいかない。
あたしは“先生”だから。
「……わかった。いいよ」
〈ほ、ほんとですか!? 助かります……〉
相当不安な気持ちを抱えていたのか、あたしが承諾すると、心底安心したような声が電話から聞こえた。
「じゃあ、明日の朝10時に駅で待ち合わせでいい?本番と同じように映画に行くわよ」
〈わかりました!……って、この待ち合わせ時間と場所を決めるのも僕の仕事ですよねっ、すみません……〉
「いいよ、まだ練習なんだから」
電話の向こうの陽があまりにも焦った声を漏らすので、あたしは思わず苦笑する。
「じゃあ、明日よろしくね」
そう言って電話を切り、あたしはぼすんとベッドに倒れ込んだ。
明日が楽しみなような、楽しみじゃないような。
でも、明日は丸一日陽を独り占めすることができる。あたしだけの陽だ。
陽はきっと、あたしに天川さんの姿を重ねるに違いないけど、デートの練習ということは、もしかしたら、手を繋いだりとか……。
そんなことしちゃうのかな、なんて思ったけど、陽の性格上まず無理だろうし、そもそもまだ告白すらしていなかったことを思い出して、首を横に振った。