オートマトン -Online- 推敲中
 結衣に浴衣を着せ終え、役目を終えたといわんばかりに早々に帰り支度を始めた美香を、結衣は小幅小さく、ゆっくり歩きながら病院の入り口まで見送りに出た。

「美香、ほんとありがとう。美香が友達でいてくれて本当にうれしいよ」

「ええええ」と言いつつも照れた表情で美香は結衣を振り返りながら続ける。

「私も。結衣が友達でいてくれてよかった。また私と遊んでやってね」

 夕日の中、去っていく美香に手を振って、結衣は病院の中に引き返した。

「あら!!」

 もう聞き慣れた声に振り向くと、同じ病室の向かいに寝ているおばあさんだった。

 たしか名前は、宮城さんだったはず。

 普段は腰のほうへ回して組んでいる両手を、いまは、めいいっぱい広げて近づいてくる。

「かわいいじゃない」

 皺に隠れそうな瞳が優しそうに細められた。

 ごつごつしているけれど温かい手が、結衣の袖から出た手を擦る。

「細いから良くうつってるわ」

 紺色の浴衣には薄い桃色の花がところどころに描かれ、紅色の帯は腰よりも高めの位置で結んである。

「ありがとう、宮城さん優しいから好き」

「結衣ちゃんだって優しいじゃない?今朝はお見舞いのお花分けてくれてありがとう。これからどこか行くのかい?」

「ううん、もうすぐ彼がお見舞いに来てくれるから、着てみたの」

「そう。そういえば最近毎晩談話室で、彼氏と携帯で話してるだろう?」

「なんで彼氏だって分かるの?」

「なんとなく」

 さらりと言ってのける宮城さんが面白くて結衣は笑う。

「結衣ちゃんはここにいるの?私はそろそろ病室に戻ろうかねぇ」

「私も戻るよ」

 2人でゆっくりとエレベーターに乗り込んだ。
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