オートマトン -Online- 推敲中
 エレベーターが開いて屋上に出ると、新鮮な夏の空気が結衣の回りを吹き抜けた。

 あまりの爽快感に、結衣は空気を肺いっぱいに吸い込んだ。

(あぁ、外って気持ちいい)

 見上げた空には星が見えた。

「1番星かな」

 結衣が祥平を振り返ると、祥平は上の空で「ああ」と相槌を打った。

「おはよう」

 結衣の突拍子もない言葉に、祥平は顔をしかめる。

「は?なんでおはようなんだよ」

「星に、おはようって」

「なんで、星に言うんだよ」

「あの1番星、今、起きたかもしれないじゃん。って言うのは冗談だけど。なんかね、最近、おはようって言うのがマイブームなの」

「ブームって…」

「朝ね、みんな、おはようって言うんだよ。看護師さんもおばあちゃんたちもおじさんも。おはようって言うと皆笑顔になってくれるんだよ」

 結衣はニコニコしながら祥平に話し続ける。

「挨拶するようになって仲良くなったおじさんがいてね、農園やってるらしくて、今日の午前中、野菜の雑誌みせてくれた」

「結衣はまだまだ赤ちゃんだな」

 子供に話しかけるような口調で祥平が結衣の頭を撫でた。

「…もう、22だけど」

「2歳か」

「ふん」

 結衣は祥平に背を向け、再び空を見上げた。

(もう、せっかく浴衣着てるのに、1回もかわいいって言ってくれないし。あげくに、なんで子ども扱いなのよ)
< 116 / 197 >

この作品をシェア

pagetop