オートマトン -Online- 推敲中
 結衣がそんなことを考えているうちに、空では2番星、3番星と、次々に星が目覚めていく。

(そういえば、『オートマトン』の太陽神界の空には星があったけど、星座はなかったなぁ、それに…こんなに綺麗に光ってたっけ?)

「結衣、あした退院するって昨日電話で言ってたよな?」

「ん?…うん」

「その後は、どうするつもりなんだ?」

「どうするって?」

「大学の夏休みが終るまであと4週間、それまでに動けるようにならないとやばくないか?」

「…そうだね」

「この病院の治療方法に納得がいってないんだろ?」

「うん」

「だったら、信頼できる医者を自分で積極的に捜さないと。それに、カウンセリングも途中になってるし、就職活動だってできてないし。全部、中途半場になってないか?」

 結衣は屋上の端までやってくると、フェンスを両手で掴んだまま、口を開く。

「どうして―――」

 結衣は突然湧き上がってきた感情が喉の外に飛び出すのをとめられなかった。

「どうして、ひとが必死に忘れようとしてることを、退院もしてないこの状況で引っ張り出すのよ!」

「……これは忘れていいことじゃないだろ?」

 後ろから祥平が近づいてくる。

「忘れていいことよ!いまは何も考えたくないの!痛いのよ、少ししか歩けないし、トイレだって大変だし、足元に落ちている物だって満足に拾えない!!痛みはぜんぜん変わらないし、先生も治るって言ってくれない!私は一生このままかもしれないのに、ほかの事なんて考えられないよ!!!」

 泣き声を我慢しても涙が次から次にあふれてくる。

「こんな体じゃ、もう、働きたくても、働けないよ…」

 結衣は入院してからずっと頭をもたげていた言葉を、はじめて口にしてみて、さらに悲しさが増した。

 美香の前でさっきはあれだけ笑顔が作れたのに。

 しゃがみ込みそうになるのを、祥平が後ろから抱きしめる。
< 117 / 197 >

この作品をシェア

pagetop