オートマトン -Online- 推敲中
 ミリンは白いボンボンのついた赤いサンタ帽子をぬいて、キャスケットにかぶせてみる。

「ほら、すごい似合う」

「ありがと。でも、あんまり…」

「こういうのきらい?」

 キャスケットは帽子をぬいで丁寧に返す。

「女の子っぽい格好して、人の優しさにつけ込んで助けてもらおうと思ってるような人と一緒にされたくないの」

「ふーん、別にいいと思うけどな、そんなことまで考えなくて」

 ミリンはキャスケットの耳から、小さなしぶいゴールドのリングが連なった少し長めのピアスを見つめた。

「これは別。ユイにもらった『深海のピアス』なの。持っていると寂しさや悲しみを癒すって言い伝えがあるらしくって」

「漁師の間でね」

「このクエスト、知ってたの?(笑)」

「廃人ですから(笑)」

「退いてー!!!!!!」

 ドドドドドドッ

「「ユイ?!!」」

 足元の雪を舞いあがらせながら1頭の羊とその背で落ちかかっているユイが突っ込んでくる。

「止まってぇーーー!!!!」

 ユイの叫びは空しく響く。

 キャスケットとミリンは反射的に後ろに飛び、その間を羊は、ドサッという音を残して猛スピードで走り抜けていった。

 2人の間でうつぶせに倒れて雪に埋もれているユイを、ミリンが助け起こす。

「なんでそうなるんだよ」

「すごい!!!羊、雪の上だと滑るよ!!!!ぜんぜん止まらないよ!!!」

 がばっと顔を上げて、目を丸くしているユイを笑いながら、キャスケットはかなり遠くに飛ばされたからくり人形のアルメェールを拾いに行く。

「ありがとう。ミリンさんもキャスケさんも、お久しぶりです!」

「ひさしぶり」

「やっほー♪」

 キャスケットはユイに微笑を返しながら、両手で小さなアルメェールの鉄のわき腹を持って、ユイの足元の雪の上においてあげた。

 カシャカシャと、多少動きにくそうに足踏みをしてから、アルメェールはキャスケットを愛嬌のある空洞の瞳で「ありがとう」と言う様に見上げた。
< 168 / 197 >

この作品をシェア

pagetop