オートマトン -Online- 推敲中
 カチカチカチと歯がなり、体も震えて、すーっときれいに息も吸えない。

 冷たい風がむき出しの顔に当たって、きられるように痛い。

 真っ暗な海岸沿いを歩く。

 祥平とつないだ右手だけ、温かく感じる。

 乾いてふかふかの砂に、足を、ずずっと吸い込まれそうになりながらも、祥平にひっぱられながら結衣はなんとか歩いていた。

「足、痛くない?」

「へいきだよ」

 結衣のうなずく声のトーンと表情が一致していないことに、祥平は気づく。

「ここらへんでいいか」

 祥平が足を止めて、暗い海を見据える。

「この方角であってるの?」

「たぶん。本当に、車の中で待ってなくていいのか?」

 そう問いかけながら祥平は腕時計を確認する。

「まだ日の出まで1時間近くあるぞ」

「いいの。車の中にいて、もし見れなかったらいやだもん」

 祥平は砂浜に腰を下ろす。

 曲げたひざを開いて結衣に座るよう促した。

 温かさを求めて結衣は祥平の前に、ひざを抱えて座る。

 祥平は結衣を後ろから抱え込む。

「最近、やっと結衣を近くに感じる」

 祥平の声がすぐ近くでした。
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